すなばこ

気になるものは何でもかんでも

艦つく所感

 まずこの所感は同ゲームを少しだけ触った者が、これまた別のゲームの鋼鉄の咆哮WSC/WSG系をある程度知っている事を前提に書いていることを許してほしい。
特にWSGはそのゲームとしての類似性から関わりを断って考えることは難しく思う。

結論から言えば全体的に荒過ぎる。

ゲームバランスが雑、クラフトとしてもちょっと中途半端。
ゲームそのものとしての洗練さに根本的に欠ける事は否めない。
光るものがないわけではないことに、なおさら惜しさが涙を誘う。
ある種の怒りに任せて書いたような記事であるし[要出典]な部分も多々あるが、個人の駄文として流してほしい。

海戦ゲームとしての艦つく

 WSG系の流れをなぞるようなスタイルで、その辺をやったことがあるならまあ同じようなものと思えばいい。
だが、海戦ゲームとして見るなら率直に言って慌ただしいだけで面白味はない。
なんと言っても不快な慌ただしさである。何にしても「やらされ」になるよう組まれているからだ。戦闘の自由度は見た目以上にずっと狭いのかもしれない。
そしてそれは特にマップの配置設計に負うところがとても大きいように感じる

 

・マップの敵味方配置が粗雑

 このゲームの面白さの9割を損なっているといっても過言ではないと思っているのがこれだ。
初期配置は双方停止状態から始まるのにかかわらず、即時に撃ち合いが発生する位置な挙句に、運が悪ければDDクラスは機関が立ち上がって回避できるようになる前に重大な損傷を負わされたりまたは撃沈される。このゲームにガスタービンがあればそんなマップでもまだ個性としてギリギリ考えなくもないが、がっかりである。

灰が自艦、青が僚艦、赤が敵艦艇。マップの1グリッドは1km程度なので狭い

このゲームの艦はちゃんと艦艇らしく加減速も操舵も長いディレイがある。WSC/WSG系に出てくるような船の形をしたターミネーター共とは違うのだ。だがゲームデザインはそれを悪い意味に逆手にとっている。 
かといって急いで前進してもそれを包み込むように配置された敵艦艇にダメージを負わされるし敵の対処と操向の維持が同時にできないので不要なダメージを負わされやすい。思い切って後進すればまあまあ戦えるが時間はかかるしミッション評価に響きやすい。
猫の額のように狭い海域、囲んだり追い立てるように近くに配置された初期配置艦艇、何故かマップの中央意外でで艦首を最寄りのマップ外へ向けて配置される自艦艇。
出勤直後に急に降ってわいた当日締め切りの仕事を連続でこなさせられ続けるようなものだ。詰将棋といえば聞こえはいいが、それがゲームとしての楽しさや海戦の魅力を再現しているかと言われれば個人的にNOだ。
そこに艦艇特有のレスポンスの悪さと後述の舵の仕様が加わり、否応なくパラレルで煩雑なタスク処理に追われる。


 ぼくとしては敵艦艇へのアプローチの仕方も海戦の醍醐味のひとつであり、同時に操艦と攻撃の忙しさを分担しうるファクターになると思っている、ここにその楽しみはない。
これはPCゲーであったなら同時に複数の操作をこなしやすいのでまだ何とかする余地は大きいのだが、残念ながらこれはスマホゲーである。操作の制限はとても大きい。

 

 おそらくデザインした側は包囲によるピンチを演出意図したのだと考えられるが、いきなり多大なリスクを負わされた状態で開始させられた挙句、切り抜けてもただそれだけというのはあまりにも寂しいリターンだ。いくらレジスタンスの立場だからといってもこれは侘びしいにも程がある。しかもそれが繰り返される。画面の中のキャラクターはそれで良しとしていても画面の向こう側にとってはたまったものではない。


ともあれ、WSC/WSG系があれだけわちゃわちゃしてもゲームとして楽しまれていたのは配置設計やそもそものプラットホームの操作性能を活かしていた事は忘れたくないことである。

 

・勝手に舵が中央に戻る。

 これはちょっと擁護のしようがない。マップと含めてゲームとしての慌ただしさと不快さを相乗で倍増させている。
ただでさえマップ端や包囲内で忙しくさせられるのに固定されず勝手に戻る舵にかかずらっている暇は無い。無能な働き者とはかの如くを言う。
スマホゲーの操舵は指定した向きに舵を固定でき、あとは舵中央への復帰指示ボタンがあればそれでいいのだ。
今すぐにでも変更してほしいなあコレ。

 

・砲の射界が砲座ごとの個別管理になった

 これは結構な進歩だと思う。クラフトの項目にも書いた(後述)が、砲旋回速度も含めて砲の初期方向の措定にも意味が生まれる。
砲の配置如何によってはメタアセンや特化型アセンを組む余地が広がるので歓迎されるべきことだと思う。
戦闘時のUIでも適度に照準の集まり具合が明示されるので分かりやすい。いちいち頭の中で考えなくても見えるので操舵の負荷が減る。

緑の円が照準点に指向可能な砲、灰色の円が指向不可能または移動中の砲



・手動/自動兵装スロットの完全固定化

 スマホゲーという媒体を考えると致し方ない省略であると思うし、悪い割り切りではない。むしろ戦闘時のUIや操作をスリムに纏められるのでプレイのしやすさとできる限りの自由をうまく両立させていると思う。
ここがぐちゃぐちゃだと乱戦になった時に混乱やミスを千客万来してしまうので大事なところである。
それが無理にでも実感できるのが先述のマップ配置故だが、そんなことで実感したくはないなぁ……

 

艦船クラフトとしての艦つく

 色々苦言を呈されている所はあるが、システム面では個人的にそう捨てたものではないと思っている。
オンゲらしく色々改良が入れば……とは思うが逆に難しいところもあるのだろう。
海戦ゲームがスマートフォンというプラットホームと決して相性がいい訳でもないし、かといってPCに版図を広げればWoWのような大手と取っ組みあうことになったり、旧い名作であるWSC/WSGシリーズと比較の憂き目に合う。
とはいえ総評としては中途半端な印象は拭えない。

 

・クラフト関連

 パーツ配置は四角のグリッド化がなされているが、これは単純化や処理の軽量化として見るならいいと思う。スマホゲームという媒体である以上ユーザー側の処理能力や環境は一定ではないし、そこで負担の大きくなる海戦を処理させるとなればこういう工夫も必要になってくるだろう。
惜しむらしくは先行となるWSC/WSGのHLGシステムという自由度の怪物と比較されてしまう事だ。あちらはドット単位でパーツの位置を指定できるので工夫すれば詰めた配置も開けた配置も自由自在だ。まあそのまま真似するわけにもいかない事情はあろうし、当のWSGだって亡ジス版では六角形のグリッド配置になっていた。

・甲板の中層部分の使用(ケースメートの再現)

 要は書いてあることそのままだが、今まで以外にこれが無かった。

特に大きく性能に寄与することではないし、狭いグリッド面積で配置に制限も多い。だがゼロではないのだ。艦艇クラフト要素のあるゲームでこれは大きい。

ケースメートを「中層」という概念で整理したことはとても大きい

・砲の初期方角を任意に指定できる

 これは単に砲の干渉を避けるリアリティを企図したものかもしれないが、これが前述の砲旋回範囲の個別管理と砲旋回速度があることに意義をもたらしている。

これをどう生かすかが設計中やひいては戦闘中の艦艇の相対方向の管理に繋がってくる。火力のの発揮できる範囲や範囲内の全力発揮までの時間が少しでも変わるならしれは大きなことだ。特に中小の艦艇では生命線になりうるかもしれない。

ともすれば特定マップへのメタアセンとして特定位置の艦艇を狩ることを意識した砲配置にすることも可能だ。これはリスクとリターンのあるいいセッティングだと思う。

前後左右8方向に設定可能

アセンブリ画面で艦を映す角度をリアルタイムかつ任意に変更できて見やすい

 これも今まで意外となかった機能のように思う。しかし配置用のグリッドが複層構造になったことを踏まえれば見やすくしないと作れるものもなかなか作れない。そんな所で職人芸を求められても困る。

幸いこのゲームでは艦の前後軸線に従ってチルトさせたり見る方向を右舷側/左舷側と任意に変更できる。しかもリアルタイムだ。いい。とてもいい。マーベラスだ。

真横から真上までくるっと回せて便利!

・WSC/WSG系とは異なり、パーツを左右非対称に配置できる

 これも存外になかったところで、アセンブリの自由度をぐっと高めてくれるいい要素だ。ちょっとレアな配置も再現できるし、ゲーム的にもメタなアセンを組むときにお世話になるだろう。特に魚雷関連は工夫の余地が広がるかもしれない。限られたリソースを片舷に集中させてもゲームなら怒られないし現物がひっくり返ってアチャーなんてこともないだろう。

 

・船体上に干渉する構造物が固定されていることがある(単純に邪魔)

 要は駆逐艦の後部通信室とかそういうオブジェクトが何故か船体パーツの一部として残され、パーツにがっつり干渉してくるのだ。これも今までなかったが、これは技術の制約よりも意図的にそうしなかった方が可能性は高い。ただただゲーム性を狭めるだけだからだ。干渉どころか砲の射界も遮るのでいいところはない。どうして設備関連のパーツとして扱わなかったのか謎しかない。しかも初期船体でこれに当たるからもう目を覆わんばかりである。合掌。

・装甲厚を任意に設定できるが、肝心の防御効果が分かり辛い

 これはなんかすごーくもったいない設定である。艦の装甲設定について、完全/集中と甲板/舷側の素材と厚さを「数値で直接」指定でき、それはリアルタイムで艦の重量と最大速力に反映される一見イカした代物だ。ここで仮想敵の火力とにらめっこしながら設定と向き合う……となればいいが、肝心の「今の装甲厚でどれだけの防御効果(ダメージ軽減やレジスト効果)があるのか?」はなんと全く分からない。困った話である。

大まかな指標もないし、何分ゲームの話であるので現実のテスト資料をどこまで参考にしていいかも困る。有志wikiにもわかりやすい記載がない(詳細な検証結果の提示はあるので分からないわけではない)。困った。そしてもったいないよコレ

ここのUIとか概念はとてもいいとは思うけどゲーム性に反映しきれてないのが惜しすぎる

・情報を把握しやすくなったパーツリスト

 ここは明確に先行同種ゲームに対する艦つくの美点であると思う。名称と外観、消費グリッドと重量、火力と発射レートといった重要な情報がストリップ形式で一覧化されていて、不足分の購入もここで行える便利さだ。
ソートや絞り込みもあるし、サイドバーにはジャンルごとに開閉できるタブもある。

過不足のないきれいなUIである。こう作りたいものだ

・パーツの種類が豊富とはいえないように感じる事

 これもWSC/WSGという比較相手が悪いと言ってしまえばそうだが、あちらはWWII時期のパーツに限っても最低4国籍分の各クラス艦艇パーツと航空機を用意しているので余りにも無法だ。
思い返せばそれ以外の艦船ゲームは大体日本艦艇のパーツ+αくらいしかなかったし、艦つくが同程度か毛が生えた程度だからといった所でどうということはないはずなのだ。
とはいえ寂しく関してしまうこともまた確かである。ここはオンラインゲームとしての強みを発揮してアップデートで色々増やして頂ければ……とは思うが商売との兼ね合いもあるだろう。
マイクロキャビンとコーエーがとち狂ってただけなのかもしれない。でもやっぱり寂しい。

 

その他細々としたところ

・自作艦艇の写真が好きな角度で撮れる

 これはもう無くてはならない機能と言っていい。待ち望まれた福音である。
WSC/WSG系の最大級の弱点がコレだからだ。まあ実のところ好きな角度というとものすごく語弊があるし決して十全なUIや内容であるとは言えないものの、それなりに好きな角度と時間帯を指定して撮れるだけでも長足の進歩といえる。
しょぼい話と笑うなかれ、これまでは叶わなかった話なのだ。
せめて言うならカメラ移動は角度と距離の操作をボタン型でもいいから切り分けて欲しいのはある。

制約はあるが、このように上から覗き込むようなアングルは撮れるしUIも消せる。

・艦つくのUI

 クラフトパートは結構作りこまれているし、出撃編成パートも便利だなと思う反面メニュー等のUIはちょっととっ散らかってるイメージを受ける。
「戻る」系のボタンが右にあったり左にあったり上や下にとあっちこっちなのであまり印象は良くない。
まさか処理をケチってそんなことにしたとは思いたくないがなんなのだろう。
あとはパーツリストやアイテム関連の縦並びリストと、出撃関連や司令部UIなどの横並びリストが混在しているのもちょっと気持ちが悪いところ。横並びは無駄に間隔があいてるのもダメである。特に「出撃」関連。あれせめてフリック移動にしてよ。
挙句メニューは4×2のグリッドであるからもうたまらない。だれかー!デザイナーのひとよんできてー!!!
せめて一列並び系のリストは縦横どちらかに統一するかせめて横並び系はフリックスクロールしやすいUIや見てて気持ち悪くない間隔にしてほしい。

 

・謎の造形の敵艦艇

 何も言わずこのSSを見てほしい。

艦艇としては明らかに破綻した設計だ。煙突の煙で視界を塞ぐんじゃあない!ともかくリアリティにも欠ける。雰囲気が台無しとはコレである。やはりこれはいたく不評だったようで、後々の出番は減ったようだが皆無になったわけではない。ストーリーにも組み込まれているからだ。整合はとれてないが。

ちなみにあまり大きな話では言えないが、ゲームの敵オブジェクトとしてはそんなに見放したものじゃないとは思っている。ファーストインプレッションが最悪なことは否めないが、設定とちゃんとすり合わさっていれば徐々に「そういうもの」として吞み込めるし、敵キャラという枠の中で制約のある火力リソースを左右方向限定で最大限活用しつつ砲を集中して配置することで砲兵装への被弾率を下げる……という目論見があったりなかったりするかもしれない。そこまで考えてないとおもうけど……

 

・キャラクター造形はもうちょっと頑張ってほしかった

 ある意味その手の王道というかテンプレ的なキャラクターが何人か出てくるが、あまりにもそこに正直ゆえに悪い意味で個性がないのはちょっと残念な所ではある。それを前面に立てなくていい。名セリフも迷言もなくたっていい。だけど台詞の端やちょっとした服装にそのキャラクターが垣間見えるものがあったらいろいろ妄想の幅が広がってよかったのになぁと思ったり。まあみんなそんなこと考えないんだろうな。アリスギアとかウマがその辺贅沢なだけでそこに慣らされすぎたんだ。

 

あとがき

 色々書いたが繰り返し述べるように何も悪いところだけでないことは確かである。

とはいえこれが日常のゲームの選択肢になるか?と言われたら肌の合う人は限られると思う。何か海戦ゲームを毎日やれと言われたらぼくは間違いなくこれではなくWSC/WSGで赤P掘りに勤しむだろう。

だからと言ってこれらが全部改善されれば、という訳でもない。プレイヤーは多数いてその中には現状を善く思っている人も少なくはないだろう。でなければ2019年のサービス開始から今日まで決して継続できなかったことは数多の半年すら生き延びられなかったゲーム達が示している。

なら自分で作れ、といっても超えるべきハードル、やるべき作業はあまりにも多すぎる。買い切りにしてもオンゲにしても継続的なアプデまで考えればとてもひとりの手に負えるなんて想像もできない。

 

いつか理想の海戦ゲームが出ることはあるのだろうか。それとも鋼鉄の咆哮の遺志を継ぐゲームが現れるのか……なんにしても生きているうちに見てみたいが……

 

3/14 一部誤字など修正